江戸時代の「びいどろ・ぎやまん」と呼ばれた和ガラスから、近代的な明治大正時代のモダンなガラスへと華開いた過程を、初公開の名品を揃えてご覧に入れたユニークで華やかな展覧会。透明ガラスの外側に赤色ガラスを被せ、日本独特のぼかし技法を用いて鱗や鰭(ひれ)を巧妙にカットし、見事に鯛を表現した「切子赤色鯛形皿」は優れたカット技法、赤の発色の美しさ、ガラス質の良さによる、まさに明治大正ガラスを代表する名品です。
型吹きガラスとは、紋様を付けた土型、金型などにガラスを吹き込むもの。型に制約され不自由で窮屈と思われますが、大らかで美しい作品が多く、動植物など自然をモチーフにした鉢や段重、型跡の美しい素朴な向付など、お洒落で日本情緒あふれる感覚がうかがえます。また、型により揃いの皿や蓋物などを量産することで、数物の美しさや組み物の魅力を実感することができます。江戸時代の型吹きガラスは、日本独特の美の頂点に位置するものといえるでしょう。
武士の権力誇示のための宴席、夫婦が誓いを立てる三々九度、儀式や神に捧げる御神酒など、日本の文化と歴史には様々な趣向を凝らした酒器が寄り添ってきました。酒盃といえば陶器や塗物が主流だった頃、艶やかで透明感のあるガラスに憧れを抱き、試行錯誤を繰り返し、17世紀半ば、本格的に長崎で製作が始まったと考えられています。一脚一脚個性に満ちた杯、家族や夫婦のように寄り添う数物の盃など、「百色百姿」ともいえる美しいびいどろの酒器群は、瓶泥舎コレクションの柱の一つです。
キラッ!ときらめく切子。西洋からもたらされた無色透明のガラスは、その洗練された美しさから、ポルトガル語の「ディヤマンテ」を語源とし、ダイヤモンドを意味する「ぎやまん」と呼ばれました。江戸後期、日本にも透明に輝く切子が登場し、霰(あられ)、麻の葉、籠目、格子、魚子(ななこ)、亀甲、七宝(しっぽう)繋ぎなど、日本の伝統的な名前と意匠を持った江戸切子が誕生します。瓶泥舎の切子の企画展では、今までにない新しい視点から、食器類はもちろん文房具や玩具、女性の装身具など、想像を遥かに超えた彫刻の美しさを紹介します。