平成23年4月に開館した瓶泥舎びいどろ・ぎやまん・ガラス美術館のコレクションの中から、選りすぐりの名品を公開した第1回目の展覧会。日本を代表する和ガラス作品である色替草花紋三段重(いろがわりそうかもんさんだんじゅう)や、金彩波頭紋金魚玉(きんさいはとうもんきんぎょだま)は、瓶泥舎美術館屈指の美しさを誇るものです。五客、十客揃いでまとめられた稀少な茶碗や向付、盃百選と呼ばれる美しさを競うびいどろ盃など、組物や数による楽しさも充実しています。
『枕草子』で清少納言が「なにもなにも、ちひさきものはみなうつくし」と記したように、昔から日本人は小さくて可愛らしいものをいつくしんできました。わずか1cm足らずの小さな吹きガラスのお茶碗から、人気のあった根付や動物の文鎮まで、かわいいのはもちろん、実物と寸分違わぬ精巧な作りのミニチュア作品を約150点展示。中でも、和宮(第14代将軍、徳川家茂夫人)の遺品と同様の「切子栓付瓶・酒杯セット」をはじめとする、精緻を極めた切子の雛道具の数々は傑作です。
江戸時代のガラスの原点である「宙吹き(ちゅうぶき)びいどろ」は、技法のシンプルさ故に際立つ美しい形と色が特徴です。形はひとつとして同じものはなく柔らかな曲線を描き、息を吹き込んだ瞬間に生み出された偶然の美ともいえます。また、諸外国のガラスにはない日本独自の色は、穏やかでぬくもりと優しさにあふれています。鶴首(つるくび)・瓢(ひさご)・かぶら形と様々な意匠の徳利や、光によって独特のマーブル模様が玉虫色に変化する練上手(ねりあげで)の作品などが並びます。
古代~中世のビーズは宗教的意味合いが強く、寺社仏閣での神秘性を強調するために使用されていました。江戸時代に入ると、限られた階級の人々の間で、華やかさを演出する装飾性の高い工芸品としてビーズ細工は愛でられます。単体では小さな可愛らしい玉ですが、連ねることで様々な紋様を描き、完成品の大きさに際限もなく無限の広がりを秘めています。江戸期のガラスビーズ細工は、屏風や台子や段重といった多様な道具を装飾することで、より魅力的な至高の工芸品へと昇華させています。